大判例

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福岡高等裁判所 昭和30年(う)2719号・昭30年(う)2718号・昭30年(う)2717号 判決

原判決は、被告人八田政孝の違反事実として、(一)東忠より原判示趣旨の下に金四千円の供与を受け(二)大林敏夫に対し原判示趣旨の下に右金四千円の内金千円を供与したとの二箇の事実を認定している。ところが一方原判決は前記被告人田中馨の違反事実として同被告人が被告人八田政孝を介して東忠より金千円を原判示趣旨の下に供与を受けたものと認定しているのである。しかもこの千円は被告人八田政孝が東忠より供与を受けたと認められた四千円の一部であることは一件記録に徴し一点の疑もない。そうすると東忠は同一金員を被告人田中及び八田に夫々日時を異にして供与したこととなるので明かに原判決の認定は矛盾することとなる。そこで記録につき、被告人八田政孝と前記東忠との間の金員授受の経緯を検討して見ると、被告人八田政孝が原審冒頭より主張弁解している如く、同被告人は東忠より金四千円を受取つた際は、極力之を拒否したが、拒り切れないまゝ一応之をそのまゝ預り、その後東忠の指示に従つて原判示の通り田中馨及び矢野惟治に金千円づゝを、又自已の判断にて大林敏夫に対し金千円を各供与し残額千円についても東忠の諒解の下に之を自己の運動報酬として収得している事を窺知ることが出来も被告人八田政孝の検察官に対する供述調書には右四千円を同被告人の自由処分に任されて供与された旨の記載がる。尤存するけれども俄かに措信し難い。この事実経過から見ると右本件四千円は被告人八田政孝が東忠より選挙の運動資金として交付を受け、その趣旨に従つて内金三千円を前記三名に供与したものと見るか、或いは少くとも田中馨、矢野惟治に対する各千円の関係については、被告人八田政孝と東忠とは当初から右金員供与を共謀して之を実行したものと見るかのいずれかでなければ合理的に解決し得ないこととなる(弁護人は被告人八田政孝は東忠の金員供与の罪の幇助者に過ぎないと主張するけれども右主張には賛同し得ない)。そのいずれの見解に立つとしても、東忠と被告人八田との間における金員授受は、その後に行われた金員供与の所為に吸収されて、別箇独立の罪を構成しないものと謂わねばならない(但し被告人八田政孝の田中馨、矢野惟治に対する金員供与の罪については審判の請求がなされていないから之を処罰の対象となし得ないことは言うを俟たない)。従つて原判決が右金四千円全額が同被告人の自由処分に任されて供与されたものとして同被告人の受供与罪の成立を認定したことは判決に影響を及ぼすべき事実認定の誤りを犯したものと断ぜざるを得ない。

してみれば此の点の論旨は理由があり、原判決中被告人八田政孝に関する部分は量刑不当の論旨を判断するまでもなく刑事訴訟法第三百九十七条に従い全部破棄を免れない。

(裁判長裁判官 高原太郎 裁判官 鈴木進 裁判官 厚地政信)

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